妊娠された方・ご家族の方へ
妊娠おめでとうございます。
うれしい反面、ドイツでどうしたらいいのか戸惑うこともあるかと思います。
そこで、みなさんがよく戸惑われることについてまとめてみました。
ドイツでの妊娠健診と出産
1.妊婦健診を受ける病院と出産する病院は違います。
日本は妊婦健診する病院で出産することが多いですが、ドイツは完全分業制。
ほとんどの妊婦さんは、妊婦健診をかかりつけの産婦人科のクリニック(Praxis)で受け、出産するときは市に数件ある大きな病院で出産しています。
(もちろん、日本と同じように助産院で妊婦健診、出産をするという方法もあります。)
出産する病院と妊婦健診を受ける病院が違うことで連携がとれないのでは、という不安があるかもしれませんが、Mutterpass(ドイツ版母子手帳)があるので大丈夫です。
もしも、妊婦健診中に何か気になる症状があるなど高度な検査が必要だと判断されたら、出産ができる大きな病院や胎児診断専門クリニック(プレナタール)へ紹介状が出され、そこと連携しながら妊娠経過を見ていくことになります。
また、帝王切開も含めてお産に対して何か気を付けなくてはいけないことがあったら、出産する病院へ34-36週頃に医師と話をしてお産の準備をする面談があります。
妊娠35週頃までに出産したいと思う病院に分娩予約を取る必要がありますので、それまでに各病院が開催している分娩見学会に参加すると雰囲気が分かるのでお勧めです。
2.Mutterpass(ドイツ版母子手帳)
母子手帳発祥の国は実はドイツ。ただし、日本の母子手帳とは大きく異なります。
ドイツの母子手帳(Mutterpass)はいわゆるカルテそのもの。
初期検査結果が出た時にかかりつけの産婦人科から受け取ります。
Mutterpassには妊娠中に受けた検査や妊婦健診の結果、エコーの所見などすべて記入されていきます。そのため、Mutterpassさえあれば出産する病院で妊娠中の経過も把握できるというわけです。
Mutterpassはその名の通りお母さんの記録だけが記載されます。2人目も同じMutterpassに記載していきますので、1冊に赤ちゃん2人分の妊婦健診記録が記入されることになります。
赤ちゃんの健診記録については、出産後に病院で渡されるKinderuntersuchungsheftという黄色い手帳に記入されていきます。
いずれにしてもカルテそのものの扱いになりますので、日本の母子手帳のように、両親からの一言、成長の記録を書く場所、参加した両親学級、気を付けたいところや緊急時の対応など細やかなものは一切記入されていません。妊娠中のご家族の様子や赤ちゃんの成長の記録などは別にとっておくことをお勧めします。
日本の母子手帳のベースは厚生労働省で公開されています。
3.産後の入院生活
日本の病院では経腟分娩の場合、出産した後初産婦さんは5日目、経産婦さんは4日目で退院することが多いです。その後、2週間健診や母乳外来で赤ちゃんの体重をフォローし、母子ともに出産した病院で1か月健診を受けます。
ドイツでは母子ともに問題ない場合、通常出産後2~3日目の退院、つまり赤ちゃんが一番体重が減っていたり、黄疸が強くでたり、母乳の分泌が変化してくる時期に退院することになります。
そのため、産後自宅にHebammeが来てくれる制度を利用することをお勧めします。
4.妊娠中の準備
ドイツでは、自分たちの赤ちゃんを迎えるのだから、そのための準備を家族全員でしておくのは当然と考えられています。
そのため、出産で入院した際はパートナーが産婦さんのお世話をすることは当然のこと。
例えば、日本のように陣痛中に助産師が付きっきりでマッサージしてくれることはなく、水分を口元に運んだり、マッサージしたり、呼吸をリードしたりすることは全てパートナーの仕事になります。(もちろん、アドバイスややり方は教えてもらえます)
出産後は母子同室。短い入院期間で赤ちゃんのお世話に慣れるために夜間でも赤ちゃんを預かることは基本的にはしませんし、必要以上のきめ細かいサービスはありません。
育児指導についても、日本では入院中に赤ちゃんの抱っこの仕方や沐浴、退院後の赤ちゃんと自分の体についての個別指導もしくは集団指導がありますが、ドイツではありません。抱っこの仕方や着替えさせ方、授乳方法は聞けば教えてくれますが(ドイツ語もしくは英語)、知っているものとして対応されます。
そのため、妊娠中から出産や赤ちゃんを迎えるために知っておくべき知識を得るために、出産準備クラスをはじめとした様々なクラスに参加することが推奨されています。
(Hebammeが開催している出産準備クラスは妊婦さん本人は保険適応になっています)
5.産後の家庭訪問
ドイツでは、産後自宅にHebammeと呼ばれる助産師が訪問して、赤ちゃんの体重や体調、ママの体調のフォローや沐浴などの育児技術について教えてくれるという制度があります。
産後の入院期間が短いため、病院で沐浴は行わないですし、育児技術がまだ取得できていないままの退院となることが多いため、特に初産婦さんはこの制度を使うことを強くお勧めします。
ただ、現在ドイツ全土でHebamme不足が問題になっているので、妊娠がわかったら早めに見つけることをお勧めします。
また、保険によっては産後訪問日数が定められているので、ご自身の保険の範囲を確認しておきましょう。
どうしてもHebammeが見つからない場合、当院で母乳外来をやっておりますので退院後1週間を目途に(何か不安なことがあればその前でも大丈夫です)赤ちゃんと一緒にご来院ください。
赤ちゃんの体重チェックをはじめ、授乳方法やミルクの量などアドバイスいたします。
3.健診・出産費用
ドイツの保険に加入していれば、妊婦健診から出産、赤ちゃんの健診も全て保険適応です。
妊娠中の各種クラスについては、Hebammeが主催している出産準備クラスは保険適応ですが、保険の種類によって一部だったり、本人以外にご主人もカバーされたりと様々です。
保険によっては出産時の医師のレベルや産後の個室部屋も補償されていたりしますので、ご自身の加入されてる保険がどの程度補償してくれるのかしっかり確認しましょう。